内村航平、王者の苦悩「地獄ですよね、また勝ってしまった」

 「(2位と)0・05点差ですよね。負けてしまった方が楽だったんじゃないか」。内村航平(リンガーハット)は言った。

 最後の鉄棒を前に、リオ五輪の個人総合を思い起こしていた。ベルニャエフ(ウクライナ)と大接戦を演じ、0・099点差で金メダルをつかみとった。このときは最後の鉄棒で逆転した。

 この日も、鉄棒を残してトップの白井健三(日体大)と谷川航(順大)を追う展開。だが、「疲労が勝って、リオの時のような『ひりつき』がなかった」。気力も緊張感も足りなかった。手放し技に高さはなく、バーに近づきすぎてひじが曲がった。下り技の着地を何とか止めて、2位の田中佑典(コナミスポーツ)との差を保った。

 リオ五輪後、初めての競技会は「しんどかった」。終盤、胸の辺りの筋肉は今にもつりそうだったという。腰や足首のけがのため、昨年12月まではリハビリ中心の生活。体操器具にはほとんど触れていなかった。練習を通してしかつけられない体力の不足が、大接戦の一因になった。

 面目は保ったものの、「地獄ですよね。また勝ってしまった」と苦笑い。「でも、それぐらい追い詰められた方がいいのかな」。10連覇を達成した王者ゆえの苦悩をにじませた。(金島淑華)

ゆーたん日和

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